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特集記事

和歌山・湯浅の醤油と金山寺味噌図鑑|歴史・種類・製法・食べ方

2026.09.24

WAKAYAMA · THE SHOYU ATLAS

Contents

醤油の一滴から、
日本を知る。

料理を調える一滴と、そのまま味わうひとさじ。
和歌山・湯浅の醤油と金山寺味噌図鑑。

醤油と金山寺味噌を添えた食卓の装飾イメージ
SHOYU & KINZANJI / AI生成の装飾イメージ

ONE DROP, ONE SPOONFUL

一滴と、ひとさじ。
そこから始まる、和歌山の旅。

港町、蔵の仕事、発酵の不思議。
いつもの食卓から、知りたいことを開いてみよう。

湯浅の物語を読む →

一滴の前に、ひとさじ。

横にスワイプして読む。登場人物は創作です。

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漫画の文字版を読む

1

湯浅で、醤油の始まりを探そう。

まずは、食べる味噌から。

金山寺味噌は、ご飯に添えるおかず味噌。

2

お坊さんが伝えたの?

覚心が1254年に味噌の製法を持ち帰った、という伝承がある。

伝承をもとにしたイメージ。

3

この汁が醤油に?

湯浅で工夫を重ねた、と伝わるよ。

伝承をもとにしたイメージ。

4

じゃあ、1254年に発明?

発明日まで証明されたわけではないよ。

物語と、確かめられた記録を分けよう。

5

この町から、いろんな場所へ。

船は、商品や原料、人もつないだ。

醸造と商いの町として発展。

6

金山寺味噌も、今日の主役。

溶かさず、粒と具を楽しんで。

主に、そのまま食べる味噌です。

豆と麦が、醤油になるまで。

横にスワイプして読む。登場人物は創作です。

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漫画の文字版を読む

1

豆だけじゃないんだ。

濃口は、大豆と小麦が基本。

塩と水も大切。

2

これが麹?

麹菌を育て、酵素の働きを借りる。

麹菌・酵素の説明用イメージ。

3

塩水と合わせると?

「もろみ」になり、醸造が進む。

濃口・本醸造の基本の流れ。

4

働くのは、麹菌だけ?

乳酸菌や酵母にも、それぞれ仕事がある。

微生物の擬人化は、説明のための比喩。

5

待ったら、そのまま瓶へ?

熟成したもろみから、液を取り出すよ。

取り出した液が生揚げ。

6

火入れをしない生しょうゆもあるね。

生でも、別の方法で衛生管理する。

生菌や健康効果を保証する表示ではありません。

今日の料理に、どの一本?

横にスワイプして読む。登場人物は創作です。

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漫画の文字版を読む

1

どれを買えばいい?

料理で、何を変えたいかから考えよう。

濃口・淡口・たまり・再仕込み・白。

2

まず一本なら?

濃口は、つけても料理に使っても。

同じ種類でも、商品ごとに味は違う。

3

淡口なら、塩分も少ない?

淡いのは色。減塩とは別だよ。

塩分は、同じ単位の食塩相当量で比較。

4

たまりと再仕込みは同じ?

大豆主体と、生揚げで仕込む方法。別の種類だよ。

たまりにも、小麦を使う製品があります。

5

白しょうゆも、大豆が主役?

こちらは小麦が主体。淡い色の料理へ。

原材料とアレルギー表示を確認。

6

味くらべは、たくさん飲むの?

同じ食材に、少量ずつで十分。

アレルギーや食事制限を先に確認。

7

残りは、食卓に置きっぱなし?

開封後の保存表示を見て、使い切れる量を。

容器によって保存条件が異なることがあります。

00

まずはここから。ひと目で分かる六つのこと

湯浅は、醤油醸造の発祥にまつわる物語と、醸造業の町並みを受け継ぐ土地です。一方、東アジアの発酵調味料の歴史全体を、一人の発明や一滴だけで説明することはできません。町に伝わる物語を楽しみながら、製品の違いも一緒に見ていきましょう。010916

知りたいことまず覚える答え
醤油には何種類ある?日本のJASでは濃口・淡口・たまり・再仕込み・白の5種類。商品名とは別の分類です。
淡口は塩分が薄い?薄いのは主に色。減塩とは別です。
金山寺味噌は味噌汁用?主にそのまま食べる「おかず味噌」。粒と具を楽しみます。
生しょうゆは菌が生きている?「生〈なま〉」は火入れをしない製品の表示。生菌がいるという保証ではありません。
木桶なら全部同じ味?原料・麹・管理・熟成・仕上げも関わるので、桶だけでは決まりません。
湯浅と興国寺は同じ場所?湯浅は醸造の町。覚心ゆかりの興国寺は、南側の由良町にあります。

分類・表示はJASと公正競争規約、食べ方と地域は登録資料・公式案内に基づきます。0304051329

01

名前の正体が分かると、売り場が読みやすくなる

「濃口」「本醸造」「丸大豆」「湯浅」は、同じ種類の名前ではありません。 一本のラベルには、何系統の醤油か、どう造ったか、どこや誰に結び付く商品かという情報が重なっています。名前を役割ごとに分けると、選ぶ理由が見つかります。0405

名札の役割分かること・分からないこと
醤油の一般分類濃口、淡口、たまり、再仕込み、白原料の構成や製法・色などの特徴。商品一個の塩分を固定する名前ではありません。
製造方式本醸造、混合醸造、混合醸造とアミノ酸液などの組み合わせ方。健康や価格の順位ではありません。
原料・工程の説明丸大豆、木桶仕込み、生しょうゆ大豆の状態、仕込容器、火入れの有無など。それぞれ別の条件です。
地域・製造者・商品湯浅、角長、三ツ星醤油産地、蔵元、商品への入口。同じ階層に並べて種類を数えません。
地域産品の登録名称紀州金山寺味噌登録された生産地・特性・方法に結び付く名称。醤油の5分類には入りません。

「湯浅醤油」という言葉も、地域の醤油を指す文脈と、「湯浅醤油有限会社」という製造者名の文脈を分けて読みます。地名だけで、すべてが同一製法・同一ブランドになるわけではありません。裏面の名称と製造者まで見るのが、最初のコツです。01212327

醤、味噌、たまり、醤油。つながるけれど、同じではない

「醤〈ひしお〉」は、古い発酵調味料をたどるときに出会う言葉です。時代によって使う材料や指す範囲が異なり、現在の一本の醤油と、そのまま同じものにはできません。味噌と醤油には歴史上のつながりがありますが、現代の醤油がすべて、市販の味噌を搾って造られるわけではないのです。0916

「たまり」にも、味噌などからたまる液を指す使い方と、JASの「たまりしょうゆ」という種類名があります。「もろみ」は醸造中の仕込み物にも、食べる「もろみ味噌」の名前にも登場します。言葉の似たところだけで、工程や食品を入れ替えないようにしましょう。040725

02

湯浅の物語は、一滴の先まで続いている

湯浅に伝わるのは、金山寺味噌の製法と、その仕込みから出る液を生かした醤油づくりの物語です。 日本遺産のストーリーでは、禅僧・覚心〈かくしん、法燈国師〉が1249年に宋へ渡り、1254年に帰国したと紹介されます。径山寺で学んだ味噌づくりを伝えたという筋書きが、由良・湯浅の発酵文化をつないでいます。01

味噌の桶にたまる液に気づき、調味料として使い、さらに多く取り出す工夫を重ねた。これが「最初の一滴」の物語です。ただし、覚心がある日に現在の醤油を発明した、と証明された出来事として読むのとは違います。中国などの醤の文化と、日本の各地で育った醸造・調味の歴史を背景に持つ伝承として味わいたい話です。010916

覚心を訪ねるなら由良、醸造の町を歩くなら湯浅

興国寺は由良町にあります。湯浅の醤油蔵の隣に建っているわけではありません。町の商いと寺に伝わる由緒を別々に訪ねることで、歴史の舞台が一つの点ではなく、紀伊半島の西岸へ広がって見えます。2901

港が運んだのは、出来上がった醤油だけではない

近世の産地には、原料や塩、容器を調達する道と、製品を売る市場が必要でした。紀伊水道・大阪湾・瀬戸内の海運は、こうしたものをつなぐ役割を持ちました。塩づくり、木桶づくり、商人や醸造家の仕事を合わせて見ると、醤油の町が海に向かって開いていた理由が分かります。13

日本遺産の解説は、紀州藩の保護のもとで商業が発展し、文化年間〈1804~1818年〉には92軒の醸造業者を数えたと紹介しています。現在の店舗数ではなく、後世の解説が伝える当時の繁栄の規模です。残る町並みは、その商いと暮らしを読む入口になります。01

銚子・野田・龍野へ。同じ味がそのまま広がったわけではない

紀州から房総への人や技術の移動は、地域の醤油史をつなぐ大切な話です。一方、関東では銚子・野田などで醸造が発展し、消費地の好みや原料、輸送の条件と結び付きました。関西の龍野は淡口の展開を知る土地です。各産地を、湯浅の製法を写しただけの場所として扱わないほうが、違いが面白くなります。131415

年表でたどる、物語と記録

時期たどれること根拠の読み方
古代~中世醤・味噌などの発酵調味料が、現代の醤油へつながる背景にある用語や食品の範囲は時代で異なる。現代の醤油の誕生年とは別。0916
1249年・1254年日本遺産ストーリーで、覚心の渡宋と帰国、味噌製法の伝来が語られる現代の文化財解説が採る伝承。醤油発明の同時代記録ではない。01
1487年・1559年歴史解説に『四条流包丁聞書』の垂味噌、『言継卿記』の醤油に関係する記述が紹介される古文献の記述を紹介する後世の解説。書物の成立年と、残る版本の年代は別。09
1535年湯浅から大坂への醤油出荷が、日本遺産解説に紹介される湯浅の商業史を伝える後世の解説。01
1804~1818年湯浅で醸造業者92軒と紹介される文化年間の説明。現在の事業者数ではない。01
1841年・1866年角長の創業、現在の「職人蔵」に結び付く建物の年代蔵元・資料館の沿革説明。2122
近代~現代醸造研究・製麹や温度管理・生産設備・流通が変わっていく地域調査に基づく技術と商業の説明。1314
2017年湯浅の日本遺産認定。8月10日には「紀州金山寺味噌」がGI第39号に登録二つは別制度。文化のストーリーと地域産品の名称保護を混同しない。0235
2025年湯浅醤油有限会社が、新しい国産杉の木桶2基の導入を発表当事者発表。新桶の醤油が既に完成したという意味ではない。33
「醤油」の古い記録は、年代だけで比べられる?

書物が成立した時代と、今読める版本の時代は別です。

古い料理書に「醤油」という字があると、その本の成立年を、そのまま言葉の初出年にしたくなります。しかし大塚秀明の文献考証は、後世に刊行された版の記述と、同時代の記述を分ける必要を指摘しています。写し直しや編集を経た資料では、同じ題名でも記載が変わることがあります。これは中国と日本のどちらが先かを急いで決めるためではなく、何を根拠に年代を語れるかを考える話。語の初出、食品の存在、現在の製法の成立も、それぞれ別の問題です。

S09 S16

1254年は、醤油の誕生日?

帰国・製法伝来の物語の年であり、発明日の証明ではありません。

日本遺産のストーリーは、覚心が1249年に宋へ渡り、1254年に帰国したと紹介します。味噌の桶にたまる液を生かして醤油づくりが発展したという伝承と結び付く年です。しかし、この説明はその日に現在の醤油が完成した記録ではありません。由緒ある物語を紹介することと、同時代の文書で出来事を確定することは別。物語を楽しみながら、どこまでが記録に基づく説明なのかを意識すると、町の歴史も立体的に読めます。

S01 S16

「発祥の地」と、世界にある発酵調味料は矛盾する?

何の始まりを指す言葉かを分けると、整理できます。

「醤油の始まり」といっても、醤のような発酵食品、液体を調味に使う工夫、現在に近い製法、産業としての醸造は同じ問いではありません。湯浅の日本遺産は、地域に伝わる起源と醸造業の町の物語を伝えています。一方、研究者の解説は中国を含む東アジアの発酵調味料や、日本の各産地での技術変化も扱います。一つの物語で全部の起源を説明せず、湯浅が育ててきた仕事と暮らしに目を向けると、その土地らしさを無理なく理解できます。

S01 S09 S13 S16

03

大豆と小麦は、どうやって一滴になる?

本醸造の基本は、原料に麹菌を育て、塩水と仕込み、分解・発酵・熟成を経て液体を取り出すことです。 主な原料は大豆、小麦、食塩、水。ここでは濃口の代表的な流れを見ます。すべての種類・蔵で同じ配合や日数になるわけではありません。040607

最初に、原料を「働きやすい状態」へ

大豆は蒸すなどして処理し、小麦は炒って砕くなど、それぞれの方法で準備します。そこに種麹を加え、麹菌を育てるのが「製麹〈せいきく〉」。麹は米だけのものではありません。醤油では、大豆や小麦に麹菌を育てた麹が活躍します。0607

大豆のたんぱく質は、旨味につながるアミノ酸のもと。小麦のでんぷんからできる糖は、甘味だけでなく、微生物の発酵を通じて香りなどにもつながります。食塩は味を付けるだけでなく、仕込みの微生物の働きに関わります。水は、塩を溶かし、成分や微生物が働く仕込みの場を作ります。06

麹、もろみ、醤油。名前が変わるところを見る

工程何をする?ここで注目すること
原料処理大豆・小麦を、それぞれに合う方法で処理する全部を同じように煮る工程ではない
製麹種麹を加え、麹菌を育てる菌を育て、その酵素の働きを利用する
仕込み麹と塩水を合わせ、もろみにする再仕込みでは塩水の代わりに生揚げを用いる
発酵・熟成管理しながら成分の分解と発酵を進める期間・温度・櫂入れなどは蔵と製品で異なる
圧搾・液の分離もろみから液体を取り出す取り出した醤油の液が生揚げ。残る粕にも使い道がある
火入れ・調整・充填製品に応じて加熱などの処理と仕上げを行い容器へ火入れをしない生しょうゆにも、別の衛生管理がある

この表は流れを知るためのものです。家庭で仕込むための配合・温度・衛生手順ではありません。040507

大豆と小麦を塩水に入れれば、醤油になる?

その前の原料処理と製麹、その後の管理が欠かせません。

本醸造の濃口では、大豆と小麦をそれぞれ処理し、麹菌を育ててから塩水と合わせます。完成した液だけを見ると原料を溶かしたようにも見えますが、実際には酵素による分解と微生物の発酵を利用しています。原料の状態、麹の出来、温度などを管理して進める仕事です。塩水へ何でも入れて放置する方法や、工程図から配合を推測した家庭仕込みを勧めるものではありません。学びたい場合は、衛生と異常時の扱いまで指導する製造者の講習・体験へ進みましょう。

S04 S06 S07 S23

04

発酵の仕事は、一種類の菌に任せきりではない

麹菌、乳酸菌、酵母は、それぞれ違う働きを担います。 大まかにいえば、麹菌が作る酵素が原料を分解し、乳酸菌や酵母が糖などを別の成分へ変えます。単純な一列の交代劇ではありませんが、役割を分けると、発酵の中身がつかめます。06

主な働き手役割の入口取り違えないために
麹菌と、その酵素たんぱく質やでんぷんを分解する麹菌そのものと、菌が作った酵素は同じではない
乳酸菌糖から有機酸などを生み、味や発酵環境に関わる「乳」が付いていても、原料の乳製品の有無を示す名前ではない
酵母糖を使い、アルコールや香りに関わる成分を生む酵母を麹菌の別名として描かない

茶色は、ただ焦がして付けた色ではない

醤油の色には、原料からできたアミノ酸と糖が反応して生まれる褐色の成分が関わります。熟成や火入れ、保存中にも色は変わり得ます。鍋で焦がした色だけでも、すべてが着色料の色でもありません。色・味・香りを合わせて見ると、濃い薄いだけでは分からない違いがあります。104634

同じ原料でも、同じ味とは限らない

原料の処理、麹の育て方、使う微生物、温度、時間、仕上げ。それぞれが製品づくりの条件です。木桶や蔵の環境もその一部ですが、それだけを味の原因と決めることはできません。「木桶だから」と言い切る代わりに、その蔵がどこを大切にしているかを読むと、比較がずっと豊かになります。13

麹菌と酵素は、同じもの?

菌は生物、酵素はその働きから作られる物質です。

麹菌を育てる理由の一つは、原料を分解する酵素を得るためです。たんぱく質を分解するプロテアーゼ、でんぷんを分解するアミラーゼなどが、原料をアミノ酸や糖へと変える働きを担います。「菌がいること」と「酵素が働くこと」を同じ意味にしないと、麹からもろみへの変化が分かりやすくなります。さらに乳酸菌や酵母にも別の役割があります。すべてを一種類の『発酵菌』が行い、最後の瓶の中でも同じように働き続ける図にはできません。

S05 S06

小麦は、量を増やすためだけに入れる?

糖の供給を通じ、甘味や発酵、香りに関わります。

小麦のでんぷんは、麹の酵素の働きで糖になります。その糖の一部を乳酸菌や酵母が使うため、小麦は甘味だけでなく有機酸やアルコール、香りの形成へもつながります。大豆は旨味、小麦は香り、と入口を分けて覚えるのは便利ですが、原料と成分の関係は完全な一対一ではありません。また、たまりは大豆主体、白しょうゆは小麦主体という違いがあります。原料の割合を知ると、色だけでは見分けられない種類の個性が見えてきます。

S04 S05 S06 S08

05

本醸造・丸大豆・木桶。良し悪しではなく、違いを読む

製法の言葉は、食品の点数ではなく、造り方の説明です。 「本醸造なら何も加えていない」「脱脂加工大豆なら大豆の代用品」といった決め付けを外してみましょう。知りたいことを一つずつ読むほうが、自分の好みに近づけます。040512

本醸造、混合醸造、混合

本醸造は、麹を仕込んで発酵・熟成させる方式です。混合醸造は、もろみにアミノ酸液などを加え、さらに発酵・熟成させます。混合は、醤油や生揚げなどにアミノ酸液などを合わせる方式です。単に「混ぜる」という一点ではなく、どの段階で何を合わせるかに違いがあります。0407

これらの区分と、糖類やアルコールなどの使用の有無は、別に確かめます。本醸造という名称だけで、原材料欄の確認が不要になるわけではありません。0405

丸大豆と脱脂加工大豆

丸大豆は、油分を含む大豆を用いるという原料の説明です。脱脂加工大豆は、大豆の油分を取り除き、たんぱく質を残したもの。旨味の原料が残っているので、「中身のない搾りかす」という理解は違います。油分の有無は工程や成分の違いにつながりますが、好みの優劣はラベル一語から決まりません。12

木桶とタンク

木桶は、もろみを仕込む容器であり、修理や更新を含めて受け継がれる道具です。一方、タンクにも管理・洗浄・生産を組み立てる役割があります。研究者の地域調査には、木桶でも発酵の際に温度管理をする蔵の例が出てきます。「木桶かどうか」と「温度を管理するか」は、別の質問なのです。13

天然醸造という表示には、条件がある

公正競争規約では、本醸造であること、セルラーゼなどの酵素で醸造を促進したものではないこと、指定された添加物を使っていないことなどを条件にしています。この言葉を、木桶使用や無加温の保証へ勝手に広げないことが大切です。個別の蔵がさらに独自の条件を掲げる場合は、その説明を読んで選びましょう。05

脱脂加工大豆は、旨味のない残り物?

油分を除いたもので、たんぱく質は醤油づくりに使われます。

大豆の油分を取り除いた原料を、脱脂加工大豆と呼びます。醤油の旨味につながるたんぱく質が残るため、「大豆の使える中身を全部取り去ったもの」という理解は違います。丸大豆の場合は、油分を含んだ原料の扱いと、醸造後に分離する油の扱いが関わります。こうした差を知ることは役立ちますが、どちらかを一律に健康・不健康、高級・低級と並べる理由にはなりません。原料と完成した味の評価は、分けて読みましょう。

S06 S12

木桶は、温度管理をしないもの?

木桶を使うことと、温度管理の有無は別です。

研究者による小豆島などの調査には、木桶を使う蔵でも、発酵時に温度管理を行う温醸蔵の例が記されています。容器の材質と、発酵環境を調整する方法を、一つの条件にしないことが大切です。また、桶に関わる微生物の環境だけでなく、原料処理、麹づくり、熟成、仕上げも味へつながります。木桶は単独で味を決める魔法の箱ではなく、造り手が管理し、修理や更新をしながら使う道具として見ると、その仕事の奥行きが分かります。

S13

天然醸造と本醸造は、同じ意味?

本醸造に加え、促進や添加についての条件があります。

「本醸造」は製造方式の区分です。「天然醸造」は、公正競争規約が本醸造であることに加え、セルラーゼなどで醸造を促進していないこと、食品衛生法施行規則の別表に掲げる添加物を使用していないことなどを定めた表示です。ここから、木桶が必須、あらゆる温度調整がない、何の原料も補わないといった条件を足してはいけません。商品が独自に説明するこだわりと、用語の使用条件を分けて読むと、似た言葉に振り回されなくなります。

S04 S05

06

五つの醤油、どの料理へ連れていく?

濃口・淡口・たまり・再仕込み・白は、色の濃さだけで分ける分類ではありません。 原料や造り方、香りの立ち方も違います。以下は種類を理解するための傾向であり、個々の商品の配合・食塩相当量・味を保証する表ではありません。0408

種類原料・造り方の入口色・味・香りの傾向最初に試す使い方
濃口〈こいくち〉大豆と小麦をおおむね同程度使う基本形赤褐色、香りと旨味のある広い用途冷奴、煮物、焼き物の仕上げ
淡口〈うすくち〉色を濃くしすぎないよう造る淡い色。塩分を減らした分類ではない吸い物、茶碗蒸し、素材の色を残したい煮物
たまり大豆を主体とし、小麦を少量使うものもある濃い色・旨味、とろみを持つものが多い刺身、照りを出すたれ
再仕込み〈さいしこみ〉塩水の代わりに生揚げで麹を仕込む濃い色と重なりのある味わい刺身、冷奴に少量から
白〈しろ〉小麦を主体に、少量の大豆を使う淡い琥珀色。濃口とは異なる甘味・香り吸い物、淡い色で仕上げたい料理

用途は入口です。淡い色の料理にも濃口を使えますし、たまりを刺身以外に使ってもかまいません。同じ料理に同じ量を付け、どの味を残したいかで選んでみてください。08

再仕込みは、二倍長く寝かせること?

違いの中心は時間ではなく、塩水の代わりに使う液です。

再仕込みしょうゆでは、一般に塩水を入れる段階で、生揚げしょうゆを用いて麹を仕込みます。一度造った醤油の液を使って、もう一度仕込む。その工程が名前につながります。ただし、単に普通の醤油を二倍の期間置いたものでも、完成品同士を二本混ぜたものでもありません。熟成期間や仕上げは製品で異なるので、二倍という数字を共通の条件にしないことが大切です。種類を選んだあとは、その商品の原材料や味の説明を見てください。

S04 S05 S07

07

「薄い」「生」「無添加」。ラベルで迷う言葉をほどく

まず名称、次に原材料、最後に食塩相当量と保存方法。 大きな商品名だけでは分からないことも、裏面で一つずつ読めます。だし醤油や甘口の商品も、呼び名だけで醤油の5分類に当てはめず、名称と原材料を確認します。だしを加えた加工調味料と、そのままの醤油では、使う量も違ってきます。050724

淡口と減塩は、別の棚に置く

淡口は、主に色を淡く仕上げる種類です。塩分の低さを選びたいなら、「淡口」の文字ではなく、減塩等の表示と食塩相当量を見ます。味がやわらかく感じられることと、実際の塩分が少ないことも同じではありません。0811

しょうゆの公正競争規約では、「減塩」はしょうゆ100g中の食塩量9g以下に加え、食品表示基準に基づく低減表示の条件を満たす必要があります。「うす塩・あさ塩・あま塩」は、同種の標準的なしょうゆより20%以上少なく、100g中の食塩量が9gを超えるもの。「低塩・塩分控えめ」等は、同種の標準的なしょうゆより20%以上少なく、比較対象等を示す食品表示基準の条件を満たす表示です。100gと100mLを同じ数値として比べないことも忘れずに。0541

生揚げ、生〈なま〉、生〈き〉は違う

生揚げ〈きあげ〉は、発酵・熟成したもろみから取り出した醤油の液を指す工程の言葉です。「生〈なま〉しょうゆ」は火入れをしない製品の表示で、規約では火入れの殺菌処理と同等の処理が条件です。「生〈き〉」はまた別で、本醸造や添加に関する条件を持ちます。読み方が違えば、見ている条件も変わります。0405

「生」だから、桶の液を無処理で詰めただけ、菌が生きたままだから健康によい、とは読めません。加熱して仕上げた醤油にも、その香りや使い道があります。0511

等級は、好きな味を決めてくれるわけではない

JASには特級・上級・標準の区分があり、種類に応じた全窒素分や無塩可溶性固形分、色などの項目で評価します。全窒素分は、旨味に関わる原料の分解物などを見る指標の一つです。しかし、数値が大きいほど、どんな料理にも自分にも合うという成績表ではありません。等級とは別に、味と使い道を選べます。04

有機と無添加は、「何について」を確認する

有機の大豆を一部に使うことと、出来上がった食品が有機JASの認証対象であることは別です。認証の表示と、原材料に関する説明を分けて見ましょう。「無添加」も、何を使っていないという説明なのかが重要です。一語だけで、安全性、健康効果、塩分の少なさまで決められるものではありません。1920

「生」は、なまと読む? きと読む?

読み方で、表示が説明している条件が変わります。

生揚げ〈きあげ〉は、もろみから取り出した醤油の液を指す工程の言葉です。「生〈なま〉」は火入れを行わず、それに相当する殺菌処理を行ったものに用いる表示。「生〈き〉」には、本醸造、酵素による促進、指定添加物や食塩以外の添加について別の条件があります。漢字一文字を英語のrawへ機械的に置き換えると、工程・商品・安全の意味を混ぜてしまいます。読みと定義を一組で覚え、生菌や健康効果の保証へは広げないようにしましょう。

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淡い色なら、塩分も少ない?

色の設計と、塩分を減らす設計は別です。

淡口は、素材やだしの色を濃くしすぎないための選択肢です。一般に、色を淡く保つ製法は、塩を少なくすることと同じではありません。また、甘味や旨味などとの組み合わせで塩辛さの感じ方も変わります。塩分を比べたい場合は、味見の印象ではなく、同じ単位の食塩相当量を見ます。淡口を「味が弱そうだから」と多く使うと、思っていた仕上がりから離れることも。まずは少量から、料理全体の味を整えましょう。

S04 S05 S08 S11 S41

9gという減塩の基準、何に対する数字?

しょうゆ100g中の食塩量で、100mLではありません。

しょうゆの公正競争規約では、減塩は100g中の食塩量9g以下で、食品表示基準の低減表示の条件も満たすこととされています。これに対し「うす塩・あさ塩・あま塩」は、同種の標準的なものより20%以上少なく、100g中9gを超えるものなどの条件があります。「低塩・塩分控えめ」等にも、同種の標準的なものから20%以上の低減と、比較対象等の表示条件があります。商品の栄養表示が100mL当たりや大さじ当たりなら、その数字を100g当たりと直接比較しません。これらの醤油用条件を、金山寺味噌の商品名へそのまま当てはめることもしません。

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08

金山寺味噌は、ひとさじで一品になる

金山寺味噌は、主にそのまま食べる味噌です。 味噌汁に溶かすための味噌を想像していたら、まずは小皿に取り、ご飯や野菜と一緒に味わってみてください。穀物の粒、具の食感、甘味と塩味、しょうがやしその気配。それらをまとめて食べるところに、この食品の楽しみがあります。0331

「なめ味噌」「おかず味噌」という呼び方は、少量ずつ添えて食べる役割をつかむのに便利です。味噌という同じ名前でも、米味噌や麦味噌を汁物に使うときとは、最初の一口への近づき方が違います。金山寺味噌を料理に使うことはできますが、最初から溶かしてしまわず、粒と具を見てみるのがおすすめです。032531

三つの穀物、四つの野菜。紀州金山寺味噌の中を見る

GI登録の「紀州金山寺味噌」では、大豆・裸麦〈大麦〉・米の三つを麹の原料に使います。具は瓜・なす・しょうが・しその四つ。それらの穀物と野菜は国内産とされ、生産地の範囲は和歌山県です。「国内産」は、すべて和歌山県産という意味ではありません。0203

注目したいのは、大豆・裸麦・米を、すべて麹として用いること。野菜をあとから単に飾るのでもなく、麹や食塩、砂糖と一緒に仕込み、発酵・熟成させます。最終製品には粒が残ります。ひとさじの中で穀物と野菜が出会っている、その姿まで製法につながっています。03

見るところGI「紀州金山寺味噌」で押さえること
麹の原料大豆、裸麦〈大麦〉、米の3種類をすべて使用
具材瓜、なす、しょうが、しその4種類をすべて使用
原料の産地上記の穀物・具材は国内産
仕込み麹・具材・食塩・砂糖を合わせて発酵・熟成
仕上がり挽きつぶさず、穀物の粒が残る食べる味噌
生産地域和歌山県

これは登録された地域産品の条件です。全国の「金山寺味噌」と名の付く製品が、すべて同じ原料・配合になるという表ではありません。03

昔から続く食品は、昔から同じレシピとは限らない

金山寺味噌には長い伝承がありますが、伝来当時の詳しい造り方がそのまま分かるわけではありません。GI明細書も、初期の具体的な製法は不明とし、後の製法や甘味の変化について説明しています。今の味を楽しみながら、現在の原材料表を中世の献立に写さないことが大切です。03

金山寺・径山寺・徑山寺。名前も残っている文化

現代の商品では「金山寺味噌」のほか、「徑山寺味噌」などの表記にも出会います。御坊の堀河屋野村は「徑山寺味噌」と表記しています。一方、中国の寺院名は伝承や資料の文脈で確かめる必要があり、似た字の寺をすべて一つにまとめてはいけません。売り場では、まず製造者の正式な商品名をそのまま読むのが確実です。010327

もろみ味噌と、どう違う?

どちらもご飯やきゅうりに添えて食べるものがありますが、同じ配合とは限りません。太田久助吟製は、金山寺味噌・米みそとは別に、大豆と麦の麹を用いる「ひしほ」を紹介しています。名前の近さではなく、穀物、具、味付けの説明を見ると、その店で選べる違いが分かります。25

商品を比べるなら、同じ100gで

以下は丸新本家が公開する個別商品の栄養成分表示の比較です。金山寺味噌全体の標準値や、独自に測定した結果ではありません。

商品表示の例食塩相当量〈100g当たり〉選ぶときの着眼点
金山寺味噌「昔ながらの味」150gカップ6.4g基本の商品として、具・甘味・容量を読む。42
具だくさん金山寺味噌270gカップ6.3g具を楽しむ設計。塩分だけでなく食感の違いにも着目。43
うす塩味金山寺味噌150gカップ5.2gこの商品の表示値。「うす塩」の文字だけで醤油用の基準を当てはめない。44

一度に食べる量が違えば、摂る食塩の量も変わります。例えば100g当たり6.4gの品を10g食べた場合、計算上の食塩相当量は0.64gです。これは量の見方を知る計算例で、摂取を勧める量ではありません。42

金山寺と径山寺、同じ寺の表記違い?

商品名と、歴史資料に出てくる寺院名を分けて読みます。

日本遺産の伝承では、中国浙江省の径山寺が登場します。現代の食品には「金山寺味噌」、製造者によっては「徑山寺味噌」という表記があります。食品名が似ているからといって、中国の同名・類似名の寺をすべて同じ場所だと考えるのは早計です。この図鑑では、商品名は製造者の表記を保持し、寺院名は各資料の文脈で扱います。文字を読みやすく直す作業と、寺の同定や伝来経路を確定する研究を混ぜないことが、歴史を正確に伝えるための鍵です。

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紀州金山寺味噌は、米麹だけで造る?

大豆・裸麦・米の三つを、すべて麹に用います。

GI明細書では、紀州金山寺味噌は大豆・裸麦〈大麦〉・米の三つを麹の原料として使い、処理・蒸し・冷却後に種麹を加えて製麹するとされています。すべてを麹として用いることが、粒を残しながら食べる製品の特徴につながります。具の瓜・なす・しょうが・しそも、麹と一緒に仕込んで発酵・熟成させます。すでに出来上がった普通の味噌へ、野菜を刻んで混ぜたものだけを想像すると、工程の違いを見落としてしまいます。

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GIは、味の一位を決める認定?

地域・特性・生産方法と名称の結び付きを扱う制度です。

紀州金山寺味噌は、2017年8月10日にGI第39号として登録されました。登録では生産地域や原料・製法の特徴が示されます。味の好みを順位付けしたり、すべての商品を同じ配合にしたりするためのものではありません。また、日本遺産は地域の文化のストーリーを伝える制度で、食品のGI登録と同一ではありません。似た時期に同じ土地の話として出てくる二つを、ラベル認証の一つにまとめないようにすると分かりやすくなります。

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昔からあるなら、今も同じ甘さ?

伝来当時の配合を、現在のラベルから復元することはできません。

GI明細書は、伝来当初の具体的な製法は不明とし、後の製法や砂糖使用の変化に触れています。現在の基準に砂糖が含まれることと、中世にも同じ配合だったことは別です。甘さや具の量、粒の食感にも、製造者ごとの違いがあります。歴史を大切にすることは、変化をなかったことにすることではありません。長く続く食品が、その時々の材料や好み、仕事とともに受け継がれてきた姿として読んでみましょう。

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小麦を使わない金山寺味噌なら、グルテンフリー?

裸麦も大麦なので、それだけでは判断できません。

GIの紀州金山寺味噌には、裸麦〈大麦〉が原料として含まれます。グルテンに関係する穀物は小麦だけではありません。「小麦不使用」と「グルテンフリー」を同じ意味にせず、食べる人の制限と個別商品の確認が必要です。大豆アレルギーの確認も、グルテンとは別に行います。食品名や発酵していることを理由に、制限のある人へ試食を勧めないでください。医療上必要な除去は、主治医の指示を優先します。

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「かける」から、「何を残したいか」で選ぶへ

料理の色、香り、旨味のどれを動かしたいか。そこから選ぶと、醤油の使い分けが身近になります。 淡い色を残したい汁物と、香ばしく焼き上げたい料理では、期待する仕事が違います。一本を万能に使ってもよいし、二本目で違いを試してもよいのです。0811

料理試す入口使うときの考え方
刺身濃口、たまり、再仕込みを少量ずつ魚の味に、どの香りと旨味を重ねたいか。付けすぎない
冷奴普段の濃口と、違うタイプを比較薬味を加える前に一口ずつ比べると、醤油の差を探しやすい
煮物濃口、または色を抑えたいときに淡口色が薄いからと量を増やさない。ほかの調味料との塩分も合わせて考える
吸い物・茶碗蒸し淡口や白だしと素材の色を残す選び方。だし入り製品との違いに注意
焼きおにぎり・焼き野菜濃口などを仕上げ近くに薄く加熱で生じる香ばしさを楽しむ。焦がしすぎない
ご飯・茶粥・野菜金山寺味噌を小皿から添える液体の調味料ではなく、粒と具も食べる一品として

醤油の用途は種類の公式解説をもとにした目安、比較の手順や加える量の考え方は、この図鑑の家庭向け提案です。特定商品の実食ランキングではありません。083142

加熱の前と後で、役割を分けてみる

醤油は加熱で香りが変化します。煮物の中で味をなじませる使い方と、仕上げ近くに加えて香りを残す使い方を分けると、同じ一本でも使い道が広がります。料理ごとに加熱時間や水分が違うので、「必ず最後」「必ず最初」という一律の順番にはしません。46

茶粥に、金山寺味噌がある風景

和歌山の茶粥と金山寺味噌の組み合わせは、公的な食文化紹介にも登場します。さらりとしたお粥と、小皿から取る粒のある味噌。汁へ溶かし込むのでなく、一口ごとに合わせると、調味料とおかずの違いを体で理解しやすくなります。金山寺味噌を初めて食べる人にも、伝えやすい組み合わせです。0131

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食卓を、小さな味くらべの場にする

まずは二種類。同じ食材・同じ量・同じ温度で比べます。 大量に飲み比べる必要はありません。使い慣れた一本と、気になる一本を選び、銘柄より先に自分が感じた違いを書いてみましょう。

小皿にA・Bの印を付け、同じ豆腐の小さな一切れなど、原材料を確認した食材を使います。香りを軽く確かめ、それぞれに少量を付けて順に味わいます。間には水を飲み、何度も量を重ねず、違いが分かったところで終えます。これは家庭で楽しむ提案で、検査機関の官能評価試験ではありません。

メモすることAB
種類/商品名/開封日
同じ食材と使用量
色:淡い、赤み、茶色など
香り:どのくらい、いつ感じるか
塩味:最初の強さ、残り方
旨味・甘味・酸味の印象
この料理なら使いたい

最後の欄は「勝ったほう」ではなく、「いつ使いたいか」。濃い味が好きな日も、素材を前に出したい日もあります。感想を事実の数値と混ぜないことも、自分の味くらべを面白くするコツです。

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開けたあとも、香りを大切にする

保存は、醤油の種類だけでなく、その商品の容器と表示で決めます。 酸素や温度の影響で色・香りは変化します。使う場所は食卓でも、置きっぱなしの場所は別に考える。これだけでも、最後まで使い切る選び方が変わります。10

未開封なら、商品の保存表示に従い、直射日光や高温になる場所を避けます。開封後は、一般的なボトルでは冷蔵の案内が基本になりますが、鮮度保持容器などには別の条件を指定した商品もあります。容器だけを見て判断せず、「開栓後」の説明を読みます。47

賞味期限は、表示された条件で保存した未開封の状態を前提とするものです。開封後の日持ちまで、その日付だけで保証されるわけではありません。大きな一本を長く置くより、小さな容量を使い切る選び方もあります。47

金山寺味噌も、昔の保存食だから今の家庭で常温放置できる、とは考えません。丸新本家の紹介商品では、開封後は冷蔵して早めに食べるよう案内されています。食べる分を清潔な器具で取り分け、保存条件は購入した品の表示に合わせましょう。424344

白い膜を見つけたら、取り除いて使ってよい?

正体が分からないものを、食べて確かめないでください。

醤油の表面に発生するものについて、産膜酵母を説明する資料があります。しかし、その説明を使って、自宅の瓶の白いものを一律に同定できるわけではありません。保管条件や汚染の状態も、画面越しには分かりません。異常が疑われる品は使用を中止し、現物の状態・期限・保管状況を製造者へ伝えて相談するか、処分を選びます。濾す、煮る、少しなめる、といった方法を安全確認の手順にはしません。

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海外の人へ渡すなら、名前より先に原材料を

Soy sauceと書いてあっても、すべて同じ原料・用途ではありません。 日本の淡口を、他国のlight soy sauceやreduced-salt soy sauceとそのまま置き換えると、色と塩分の意味を取り違えることがあります。最初は「淡い色に仕上げる種類」「塩分を減らした商品」と説明を分けると伝わりやすくなります。0408

金山寺味噌は、英語ならまず「穀物と野菜を発酵させた、ご飯に添えて食べる味噌」と説明すると、味噌汁へ全部溶かす誤解を避けられます。商品名は残し、何とどう食べるものかを添える。初めての食品を贈るときにも役立つ伝え方です。0331

アレルギー、グルテン、アルコールは別々に確認する

大豆や小麦の使用、裸麦などに由来するグルテン、だしの魚介類、添加された酒精などは、別々の確認事項です。発酵過程でアルコールが生じるため、原材料欄に「アルコール」と書いていないことだけで、アルコールを含まないとは保証できません。また、生まれたアルコールと、製品へ加えたアルコールは別の話です。06171842

Vegan・Halal・gluten-free等は、醤油や金山寺味噌という食品名だけで一律に保証しません。対象の商品、原料、製造・認証条件を確かめます。だし入りを「普通の醤油だから植物性」と説明しないことも重要です。確認できない品を、制限のある人へ「たぶん大丈夫」と勧めないでください。04171824

発酵食品だから、という健康の近道を作らない

発酵は食品を造る仕組みです。「生だから菌が腸で働く」「昔ながらだから病気を防ぐ」といった効果まで、表示や物語から飛び越えて説明することはできません。食塩相当量と食べる量を見ながら、味や食文化として楽しむのが、この図鑑の入口です。0520

家庭で仕込みたいときは、学べる体験から

麹の準備、塩分、温度、容器、異常時の判断は、ただ長く置くこととは違います。この図鑑の工程図を、家庭仕込みの配合表として使わないでください。挑戦するなら、指導者がいて衛生・保存・持ち帰り後の扱いまで説明する講習や、製造者の管理された体験を選び、指定手順を守ります。塩を自己判断で大きく減らすなど、条件を変えたまま同じ安全性を期待しないことも大切です。0623

原材料にアルコールがなければ、ゼロ?

発酵で生じる分と、加えた分は別です。

醤油の発酵では、酵母が糖を使ってアルコールを生みます。一方、商品の原材料欄に「アルコール」「酒精」と書かれる添加もあります。原材料欄は完成品に存在するすべての成分量の一覧ではないため、記載がないことだけでゼロを保証することはできません。宗教上・医療上などの制限がある場合は、対象商品の成分や製造者の確認を使って判断します。加熱すれば必ずゼロになる、といった案内にも置き換えません。

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知ったあと、湯浅と周辺を訪ねる

町並み・資料館・現役の蔵・買い物は、見られるものがそれぞれ違います。 最初に目的を一つ決めると、立ち寄り先を選びやすくなります。以下は公式の公開案内を確認した入口であり、編集部の訪問体験記ではありません。

行き先できること・見たいもの訪問の読み分け公式の入口
湯浅の伝統的な町並み醸造と商家の暮らしを、通り・小路・格子・土蔵から読む住居・作業場には立ち入らない湯浅町の文化財案内 ↗
角長の醤油資料館・職人蔵醤油づくりの道具・歴史の展示資料館の予約案内を確認。現役工場への立入り許可とは別角長 醤油資料館 ↗
湯浅醤油 九曜蔵ガラス越しの仕込み見学、予約制のガイド・体験、売店・蔵カフェ自由見学は9名以下・貸切バスなしが条件。ガイドや体験は予約九曜蔵 見学・体験 ↗
丸新本家金山寺味噌や関連商品を選ぶ製品の販売と、九曜蔵の見学条件を分ける丸新本家 ↗
太田久助吟製金山寺味噌、米みそ、ひしほを知り、買う店舗案内あり。製造工程の対面見学は、この案内では確認できない太田久助吟製 アクセス ↗
甚風呂かつての銭湯を使った歴史民俗資料館現在、入浴する場所ではない湯浅町 甚風呂 ↗
興国寺〈由良町〉覚心ゆかりの寺の由緒に触れる湯浅町内ではなく、別の移動計画を立てる由良町観光協会 興国寺 ↗
堀河屋野村〈御坊〉三ツ星醤油・徑山寺味噌と、その背景を知る公式にあるのはバーチャル蔵見学。対面見学可とは扱わない公式サイト ↗バーチャル蔵見学 ↗

見学・展示・販売の区別は、それぞれの運営者・自治体の案内に基づきます。2223242628293035

電車で訪ねるなら、二つの駅を混ぜない

湯浅の町歩きはJR湯浅駅が入口です。角長も同駅からの徒歩案内を掲載しています。興国寺へ行く場合はJR紀伊由良駅側の案内を見ます。湯浅駅で降りれば、すべて同じ散策圏にあるという計画にはしないでください。2229

まずは湯浅で、資料館と町歩き、買い物を一組にする。製法に興味があれば九曜蔵のガイドや体験を予約する。由良や御坊は、移動時間と当日の目的を分けて組む。これは、訪問先を詰め込みすぎないための旅の提案です。

九曜蔵のカフェには、醤油を使ったソフトクリームの案内もあります。甘い食品との出会いを楽しむ入口ですが、原材料・アレルギーはそのメニューで確認します。醤油単体と、乳などを含むスイーツの条件を混ぜないようにしましょう。23

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一滴の向こうに、次の造り手と資源がある

伝統を続けるには、古い道具を残すだけでなく、作り直せる人と材料も必要です。 木桶には、修理・更新、木材の調達、造り手の技術が関わります。湯浅醤油有限会社は、2025年10月に国産杉の木桶2基を導入したと発表しました。新しい桶で仕込む醤油の完成は、発表時点で2028年頃の予定です。既に店頭で買える新製品という話ではありません。33

研究者による紀伊半島の調査には、麹づくりの温度や湿度を、天気や原料の状態に合わせて調整する仕事が描かれています。気候への対応を考えるなら、まずこうした現場の条件を知ることが出発点になります。「温暖化で湯浅の醤油が何年後に造れなくなる」といった予測を、この資料だけから導くことはできません。13

搾ったあとにも、行き先がある

醤油の液を取り出したあとには、しょうゆ粕などが残ります。キッコーマングループは、しょうゆ粕の飼料への利用や、分離したしょうゆ油を燃料へ回す取組を紹介しています。これは同グループの事例で、湯浅のすべての蔵が同じことをしているという意味ではありません。使う一滴だけでなく、その前後の資源にも目を向けると、醸造が産業として見えてきます。32

次の一本を選ぶとき、もう一つだけ質問を

「どの料理で使おうか」に加えて、「この味は、どんな仕事から生まれたのだろう」。答えはラベルにあるかもしれません。蔵の説明や、粒の残る金山寺味噌の中に見つかるかもしれません。

湯浅と和歌山の発酵文化は、遠い時代の物語だけでなく、今日の食卓へ届くものです。一滴とひとさじを入口に、好みの味と、その背景を探してみてください。

掲載情報について

情報確認日:2026年9月24日。醸造の配合・期間、塩分・原材料・保存方法は商品で異なります。比較表の数値は、明記した対象と単位によるものです。規格・表示制度、商品仕様、営業・見学・予約・メニュー等は変更されるため、購入・訪問前にリンク先の公式案内と商品の表示をご確認ください。過去の導入発表と、その後の製品完成予定は分けて記載しています。歴史の伝承は、伝承として紹介しています。

木桶は、昔のものを使い続けるだけ?

新しい桶を作り、次の仕込みへつなぐ仕事もあります。

湯浅醤油有限会社は、2025年10月に国産杉の木桶2基を導入したと発表しました。発表には、内側の漆で杉の香りの移り方を調整する工夫も記されています。これは同社の新しい桶の仕様で、すべての醤油木桶の共通構造ではありません。そこで仕込む醤油の完成は発表時点で2028年頃の予定。桶が出来たこと、仕込みが進むこと、商品が出来上がることを分けると、伝統を続ける仕事の時間の長さが伝わります。

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醤油を搾った粕や油は、そのまま捨てる?

食品以外の用途へ回す企業の取組があります。

キッコーマングループは、醤油の圧搾後に残る粕を飼料へ利用し、分離したしょうゆ油を燃料として使う取組を紹介しています。液体の醤油だけではない、醸造の流れを考える例です。ただし、これを和歌山のすべての蔵で実施しているとは説明しません。回収や品質管理、運び方、利用先が必要になるため、各社の条件によって仕組みは異なります。発酵食品の未来を考えるときは、商品の外側にあるこうした仕事も調査したいところです。

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主要情報の確認元・掲載情報について

原稿の情報確認日:2026年9月24日。本文中の出典番号から対応資料へ移動できます。導入画像はAI生成の装飾で、実在の商品・施設の記録写真ではありません。

  1. 文化庁 日本遺産ポータル『日本遺産「最初の一滴」醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅』
  2. 農林水産省『地理的表示登録 第39号 紀州金山寺味噌』
  3. 紀州味噌工業協同組合/農林水産省公開『紀州金山寺味噌 明細書』
  4. 農林水産省『しょうゆ 日本農林規格 JAS 1703:2021』
  5. 醤油業中央公正取引協議会『しょうゆの表示に関する公正競争規約・施行規則』
  6. しょうゆ情報センター『しょうゆの原料』
  7. しょうゆ情報センター『しょうゆの製法』
  8. しょうゆ情報センター『しょうゆの種類』
  9. しょうゆ情報センター『しょうゆの歴史』
  10. しょうゆ情報センター『保存についてのQ&A』
  11. しょうゆ情報センター『おいしさについてのQ&A』
  12. しょうゆ情報センター『原料と製造法についてのQ&A』
  13. 福留奈美/キッコーマン国際食文化研究センター FOOD CULTURE 29『紀伊半島と小豆島のしょうゆづくり―木桶造りの伝統と変化―』
  14. 舘博/同センター FOOD CULTURE 29『濃口しょうゆが主体の関東地方』
  15. 舘博/同センター FOOD CULTURE 28『淡口しょうゆの誕生と近畿のしょうゆ』
  16. 大塚秀明/同センター FOOD CULTURE 31『中国語「醤油」事情』
  17. キッコーマン お客様相談センター『小麦アレルギーや大豆アレルギーの場合、しょうゆの除去は必要ですか』
  18. 米国食品医薬品局 FDA『Gluten and Food Labeling』
  19. 農林水産省『有機食品の検査認証制度』
  20. 消費者庁『食品添加物の不使用表示に関するガイドライン』
  21. 株式会社角長『角長 公式サイト』
  22. 株式会社角長『角長 醤油資料館』
  23. 湯浅醤油有限会社『湯浅醤油 九曜蔵 見学・体験』
  24. 丸新本家『丸新本家 公式サイト』
  25. 太田久助吟製『太田久助吟製 公式サイト』
  26. 太田久助吟製『太田久助吟製 アクセス』
  27. 堀河屋野村『堀河屋野村 公式販売サイト』
  28. 堀河屋野村『堀河屋野村 バーチャル蔵見学』
  29. 由良町観光協会『興国寺』
  30. 湯浅町『甚風呂』
  31. 農林水産省『金山寺味噌 和歌山県/うちの郷土料理』
  32. キッコーマングループ『資源の活用』
  33. 湯浅醤油有限会社/PR TIMES配信『国産杉の醤油木桶導入発表』
  34. 大亦正次郎・上野照雄・中川泰/日本農芸化学会誌『醤油の褐変現象に関する研究(第8報)醤油麹の褐変現象(I)』
  35. 湯浅町『日本遺産認定』
  36. 消費者庁『食品表示基準等について/現行資料入口』
  37. 丸新本家『金山寺味噌 昔ながらの味 150g』
  38. 丸新本家『具だくさん金山寺味噌 270g』
  39. 丸新本家『うす塩味金山寺味噌 150g』
  40. しょうゆ情報センター『しょうゆのおいしさ:色・味・香り』
  41. キッコーマン お客様相談センター『開栓後のしょうゆの保存方法と使用期間目安』
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